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vol.15
日本女子大学人間社会学部教授
大沢 真知子
南イリノイ大学経済学部博士課程修了。Ph. D(経済学)。ミシガン大学ディアボーン校助教授、亜細亜大学助教授・教授を経て現職。専門は労働経済学。近著書は『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社、2015a)『なぜ女性は仕事を辞めるのか』共編著(青弓社、2015b)内閣府「仕事と生活の調和連携推進評価部会」委員。東京都女性活躍推進会議専門委員。
「忍者がいまに伝えるもの」
8月の終わりから9月にかけてリスボンとロンドンに出張した。一番の収穫は、同じ世代の大学に勤務する女性研究者の本音が聞けたことだ。日本にいると、海外では解決済みの問題を日本では未だに解決できずに働く女性たちが生きづらさを感じているように思う。私も、ワークライフバランスや仕事と家庭の両立といった問題は、先進国で働く女性たちにとっては過去の問題だと思っていた。しかし、実際には、支援は手薄で労働は強化され、働く女性がみな悩んでいる問題であった。また、若い世代では研究の分野でも期間の定めのある契約のもとで働いている人が増えていた。グローバル化にともなう競争社会の中で、勝者なき戦いに巻き込まれているのだ。
その中で競争に巻き込まれずに企業が存続し続けていくためには他社にはないものを生み出していくしかない。そして、そのためには、多様性を重視した経営を行う必要がある。
ここまでは経営学の教科書に書いてある話である。しかし、ダイバーシティの考え方が忍者に求められる資質と共通しているとは知らなかった。
ロンドンに着いた日に、三重大学の山田雄司先生の「忍者とは何じゃ」という講演を聞く機会があった。忍者といえば、黒装束に身を隠して敵の陣地に行き、手裏剣を使って敵を撃退する特殊な能力を備えた特別の存在だと思っていた。しかし、山田先生によると、忍者は、戦国時代に忍びと呼ばれ、主な任務は諜報活動。情報源が多様であるほど情報の質は高くなる。そのために高いコミュニケーション能力を備える必要があり、優れた忍びになるためには、「我を知るべし」という教えが文書に残されているのだそうである。
それを聞いて気がついた。それって管理職のダイバーシティ研修で聞いた話と同じだ。