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vol.17
ジャーナリスト・元日本経済新聞論説・編集委員
ワークライフバランス推進会議委員
岩田 三代
1952年愛媛県生まれ。愛媛大学法文学部卒。日本経済新聞社で女性労働、家族問題、消費者問題など幅広く取材。2015年に同社退職。現在、フリージャーナリストとして活動する傍ら実践女子大学、東京家政大学で非常勤講師(ジェンダー論)を務める。独立行政法人国民生活センター非常勤監事。
「今のままでいい」は本当か
「我が社では女性がお茶くみをしています。廃止して女性が活躍できる体制を整えたいのですが、肝心の女性たちから『今のままでいい。余計なことをしてくれるな』と言われ困っています。どうすればいいでしょう」。この夏、東京で開かれたシンポジウム会場でこんな質問が出た。一般財団法人女性労働協会が厚生労働省の委託を受け実施している「中小企業のための女性活躍推進事業」の一環で、私はファシリテーターを務めていた。経営におけるダイバーシティ(多様性)の大切さが叫ばれて久しいが、中小企業ではまだ女性がお茶くみをしているところがある。この現実にまずショックを受けたが、「女性管理職を増やそうにも、女性自身がなりたがらない」などの声は大手企業でもよく聞く。女性の意識改革は日本企業が直面している共通の課題と言える。
女性たちは、なぜ変化を嫌がるのか。大きな理由は「変化後の私」が見えないことだろう。まずはモデルをつくる必要がある。お茶くみをよしとしている女性でも、身近でやりがいのある仕事を生き生きとしている仲間を見れば、「次のチャンスには私も」と思うのではないか。その時に大切なのは多様なモデルをつくることだ。ワークライフバランスを実現できず、目を吊り上げて働かざるを得ない状況や、結婚・出産をせず仕事一筋でなければ活躍できない状況を目にすれば「私は嫌」となってしまう。目指すべきは一筋派もいれば、家庭と両立している人、地域で活躍している人、スポーツを楽しんでいるなど多様で個性豊かな管理職モデルがいる職場。にもかかわらず「私は…」というのであれば、それは個人の生き方の問題。それに見合う処遇を考えるしかない。企業の本気度も含め、日本の現状はまだ、そんなダイバーシティからはほど遠いのではないか。