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vol.7
NTTコミュニケーションズ株式会社 常勤監査役
ワーキングウーマン・パワーアップ会議 推進委員
小林 洋子
1978年「就職氷河期」に日本電信電話入社、大阪転勤の後サントリーに出向し宣伝を学ぶ。NTT民営化時にはCIを担当し現在のNTTロゴマークを作成。1999年NTT四分割に伴ってNTTコミュニケーションズへ。「OCN」を事業として立ち上げ、会員数No.1のインターネットプロバイダーにする。 2008年NTT初の女性取締役として法人営業を担当。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の一人に選ばれる。
女子力と壁
ある外資系企業に勤めるLGBTの方の体験談である。男性から女性になって、スカートをはいて通勤し始めてから何が一番変わったかというと「人によくぶつかるようになったこと」。日がたつにつれ分かってきたのは、無意識のうちに女性は男性に道を譲っているのではないかということ。その目で観察すると、混雑している通路などで、女性は男性に対して一瞬身を引きよけるが、女性同士だとよけたりはしない。だから、男性だった頃と同じ感覚で普通に真っ直ぐ歩いていると、男性にも女性にもぶつかることになる、という訳だ。我が国では今日ですらなお、女性は「一歩さがって」「控えめである」ことを美徳と考える向きがある。男性多数の中に女性がちらほらという会社の宴席で、大皿から料理を取り分け、鍋の担当も率先して行うのは、年齢に関わらず多くの場合女性だ。それをしないと「気が利かない」と思われるからか、普段自宅でやっていることの延長なのか。「それは女性の役割」という人は男性にも女性にもいる。
しかし、そんなカルチャーに嫌気がさして日本企業を辞めていく優秀な外国籍社員が後を絶たないことも事実だ。私自身は、人が面倒だと思うことは自分が率先してやるようにという親の教えに従い宴席でも自然に「料理の取り分け」をやっていたのだが、外国籍の女性後輩に「女子力、そんなに大事ですか!」と涙目で止められた経験がある。目からウロコが落ちた思いがした。
「女子力」という名のもとに、女性が雑用を担当し皆に奉仕することを称えるカルチャーを、私たちは助長してはいまいか。それは個人の趣味の範囲を越え、職場において女性活躍を阻む目に見えない壁になってはいないだろうか。