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vol.6
NHK放送文化研究所 メディア研究部副部長/NHK解説委員
ワーキングウーマン・パワーアップ会議 推進委員
後藤 千恵
大分市出身。1988年早稲田大学政経学部政治学科卒業。同年NHK入局。福岡放送局を経て1993年東京・報道局社会部記者。ニュース取材・リポートのほか、NHKスペシャル、クローズアップ現代などの番組制作に携わる。2003年厚生労働省クラブキャップ。2006年NHK解説委員。労働、福祉、社会保障、地域づくりなどのテーマを担当。2013年よりNHK放送文化研究所メディア研究部副部長(解説委員兼務)。
「会社人間」より「社会人間」
人間と機械の違い、それは当然のことながら、人間には"心"があるということだ。機械は、与えられたワークを常に一定の動作でこなすが、人間の場合は同じ仕事であっても、心のありようによって変わってくる。 以前、取材した大阪のあるカフェでは、アルバイトの女性を正社員にした途端、働きぶりが変わった。それまではマニュアル通りに動くだけだったのに、一人でも多くのお客さんに来てもらおうと、自分からアイディアを出して工夫をし始め、売り上げの数字を伸ばしていったのだ。生産年齢人口が減り、人材の確保がますます難しくなる中で、貴重な労働者一人ひとりの力をどうやって最大限に引き出していくのか、大きな課題だ。労働者をコストだと思ってないがしろにすれば社員はやる気を失い、働きがい、やりがいの感じられる環境を整えれば、社員は力を十二分に発揮し、それが収益増にもつながっていく。
優秀な人材を繋ぎとめるためには、柔軟で多様な働き方ができる職場環境づくりも急務だ。電通総研が300人の会社員を対象に、仕事中心派、ワークライフバランス派、私生活中心派に分けて比較調査したところ、仕事中心派はストレスが目立って高く、停滞・行き詰まり感を感じている一方で、仕事に最も能動的に取り組んでいるのはワークライフバランス派だった。会社に忠誠を尽くす「会社人間」よりも、家族や地域、社会に目を向け、様々な役割を果たす、いわば「社会人間」の方が会社への貢献度が高かったのだ。
時代は変わろうとしている。どうやって収益を上げるかを考える前に、どうすれば一人ひとりの人材が働きがいを感じ、最大限の力を発揮できる職場にできるのかを考えることこそが、企業にとって最大の成長戦略となるのではないか。