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vol.5
公益社団法人 労務管理教育センター 理事長
君嶋 護男
1948年茨城県生まれ。1973年4月労働省(当時)入省、労働省婦人局中央機会均等指導官として、男女雇用機会均等法の施行に携わる。その後、同局庶務課長、愛媛労働基準局長(当時)、愛知労働局長、労働大学校長、(財)女性労働協会専務理事等を経て、現在、(公社)労務管理教育センター理事長。 著書に、「キャンパスセクハラ」、「ここまでやったらパワハラです!」、「セクハラ・パワハラ読本」、「混迷する労働者派遣の行方」等
女性の活躍推進のためには過去の検証が重要
女性の活躍が盛んに叫ばれている。これまで、多くの女性が様々なしがらみの中でその能力を十分に発揮できずに職場を去っていたことは、本人だけでなく、産業界、ひいては社会全体にとっても大きな損失といわざるを得ず、そうした意味から、政府が積極的に音頭を取り、女性の活躍を推進していくことは、有意義なことといえる。ただ、今の進め方を見ると、管理職等が他の先進国に比して相当に少ないなど、女性がその能力を十分に発揮できていないとみられる理由について十分に分析・検証することなく、「とにかく進め」と、前のめりになり過ぎているように感じられる。過去において、女性は多くの職場において不当な扱い(活躍を阻害される行為)を受けてきた。結婚退職、男女別定年、実質的な男女コース別管理、賃金差別、産前産後休業、育児休業等を理由とする差別的取扱い(マタニティハラスメント)、セクシャルハラスメント等。これらについては、裁判を舞台にした多くの争いがあり、膨大な裁判例が積み重ねられているから、これらを改めて整理、分析・検証していくことも、女性の活躍についての議論、政策をより地に足の着いたものとするために重要と考えられる。
今年は、初めて女子保護規定が設けられた工場法の施行(1916年)から100年、男女雇用機会均等法の施行(1986年)から30年、女性労働に関する初めてといえる判決(住友セメント結婚退職 東京地裁1966年12月20日判決)から50年、更にいえば、婦人参政権の行使(1946年)から70年という節目の年である。これを機に、これまでの女性労働のあり方について見直しを行い、その上に立って新たな政策を打ち出してほしいと願うところである。