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vol.12
中央大学経済学部教授
ワークライフバランス推進会議委員
阿部 正浩
1966年福島県いわき市生まれ。 慶應義塾大学商学部卒業後、同大学大学院商学研究科博士課程単位取得中退。労働経済学、計量経済学専攻。主な著書は、第49回日経経済図書文化賞、第29回労働関係図書優秀賞を受賞した『日本経済の環境変化と労働市場』(東洋経済新報社)。現在、 厚生労働省労働政策審議会委員、内閣府仕事と生活の調和連携推進・評価部会委員、経済産業省新・ダイバーシティ経営企業100選運営委員会委員、日本生産性本部ワークライフバランス推進会議推進委員などを兼務。
「意識変化、取り組み積極的に」
20年前、30年前の状況を知る一人としては、今の状況には隔世の感がある。ここ2〜3年で、ワークライフバランスやダイバーシティに対する企業の取り組みが、大きく変化してきたからだ。それまで積極的に取り組んできたのは、女性を多数活用する大企業など一部の企業だけだった。多くの企業は、次世代法が施行されたし、世間的にも女性の採用をしておいたほうが良いといった、仕方なくやっている面が強かったように思う。
2006年頃だったと思うが、ある企業の人事担当者が私を訪ねてきた。当時、少子化とは言っても大卒者数はまだ増加傾向にあったが、男性採用が徐々に難しくなっていた。その担当者は、男性採用が難しいので女性採用を増やそうと思うけれど、女性に辞められるのが心配だ、と言う。各種制度はあるけれど、職場の意識は低く、経営陣も本当のところは女性活用を望んでいるわけではないのだ、とその人は嘆いていた。立派な制度はあるけど運用ができない、多くの企業はこんな調子だった。
ところが、最近は経営者も職場全体も意識が変わって、積極的に取り組む企業が増えた。特に地方の中小企業では、自社の身の丈にあった独特の制度を整備し、上手く運用する企業が増えたように感じる。深刻な人手不足に直面していることもあり、取り組みに対する真剣さがこれまでとは違う。日本生産性本部のワークライフバランス推進会議が実施した、昨年度の「第9回ワークライフバランス大賞」を受賞した企業もそうした企業だ。自社の状況を分析し、本当に必要な制度だけを組織に根付かせる。その結果、従業員の満足度も高まり、生産性も上がるという好循環に乗っている。多くの企業が好循環に乗れるよう、我々も手助けが出来れば嬉しいと思っている。