vol.34
実践女子大学 教授
ワーキングウーマン・パワーアップ会議 代表幹事
鹿嶋 敬
日本経済新聞に入社後、生活家庭部長、編集局次長兼文化部長、編集委員、論説委員などを経て2005年4月から実践女子大学教授。内閣府男女共同参画会議議員、日本生産性本部・ワーク・ライフ・バランス推進会議代表幹事などを兼任。著書に『恵里子へ 結納式の10日後、ボリビアで爆死した最愛の娘への鎮魂歌』(日本経済新聞出版社)、『男女共同参画の時代』(岩波新書)、『雇用破壊 非正社員という生き方』(岩波書店)など
「女性活躍推進」と言うけれど
「女性活躍推進」の6文字が連日のように新聞に踊る。内閣府の男女共同参画会議議員として長く男女共同参画社会の形成について議論等を重ねてきたが、官民挙げて、今ほど「女性活躍推進」が叫ばれることはかつてなかった。それだけに、一抹の危惧の念も抱く。あえて2点挙げるとすれば、1点は安倍総理自らが語るように、それが経済政策の一環でしかなく、社会政策ではないということだ。民主党政権時代もやはり同様の考えだったが、社会政策、すなわち男女平等など人権の視点等を抜きにして、単に活躍、活躍と唱えるだけで本当に女性が活躍できる社会になるのだろうかということである。
もう1点は、女性管理職等の数値目標に反発する声が経済界の一部にあることだ。男性への逆差別につながるから、というわけだが、 女性差別の歴史の長さ、重層的に組み込まれ女性への差別構造の頑強堅牢さ等を考えれば、男性差別だなどの反論は薄っぺらなものでしかない。
多様な属性、価値観を尊重するダイバーシティも、背景にそのような人権感覚を秘めていることを理解しない限り、なかなか実効性を担保するまでには至らないことを肝に銘じるべきである。