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インタビュー「私とメンター」

例外的に見られてはダメで、ある程度の人数が必要

長谷川 そこは具体的に人事部長がブレイクダウンしてくれています。そのための特別な女性のデベロップメントプログラム「WILL」や「WILLプラス」というのもつくりました。
 メンタリングもやり、この3月に終わる期で70人ぐらいの卒業生がいます。その中から、もう5名ほどは管理職になりましたし、予備軍も育ってきているんですけれど、それでも足りないですね。だから、また元の話に戻りますが、外からもし本当に来ていただける人がいれば、そちらもやらなければいけないと思っています。ある程度人数が増えないといけない。あくまで例外的と見られているようではダメなのです。要は静止しているものを動かす時に一番力がいるという物理学の理論と一緒だと思いますね。

アキレス 最初に思い切って動かさないと、次が回っていかないですものね。

長谷川 経済同友会では活躍しておられる女性の方も沢山いらっしゃいますが、女性の活躍の場を広げると言ったら、「普通に平等に扱ってもらえればそれで結構です。そうすればきちんとやります」と言われました。機会さえ均等に与えてくださればよいと。実際に成功した方はそうおっしゃいますね。だけど逆に言えば多くの企業は男性社会で、そこでずっと育った男性は何の疑問も持っていないし、全く逆の立場のマイノリティもノーマイノリティになった経験もないから、そちらからの目線というか感性が働かないんですよ。

アキレス それは結構進んでいる外資系の企業でも話題になっていて「アンコンシャス・バイアス」という言葉で表されています。悪気はないけれど一定の考え方で固まっていて、その眼鏡を通して見てしまうということですね。

長谷川 だから、それが当たり前だと思ってしまう。何かをやろうとすると逆差別じゃないかとかね。何で、そんな女性だけ優遇するんだとか。

パイオニアの方には後に続く人のことを考えて、乗り越えてほしい

写真:対談風景
アキレス 最後に、読者へのメッセージと女性への期待をお聞かせください。

長谷川 90年代の初め頃、私がアメリカにいる時に、副社長をやっていたベテランの営業部長に「アメリカは女性が随分進出して活躍していていいよね」と言ったら、「いやいや、そんなことは心配しなくていいよ。アメリカだって50年代は女性はみんな家庭にいたんだ。それがいろいろな経緯を経てこうなったんだから、日本だって放っておけばそうなるよ」と言われました。でも、20数年経ってもなかなか変わってきていませんね。
 日本の社会はアメリカの社会と違うんですね。女性の職場進出だとか、管理職登用についても違う。日本の場合、特に日本女性の奥ゆかしさという部分が、そこにおいては必ずしもプラスに働いていない。例えば「管理職になりませんか、なってくれませんか」と言っても、「いえ、私は自信がありません」とか「できません」という返事になる。そこは是非、やはりパイオニアの方たちが、後に続く人たちのことも考えて乗り越えて行っていただきたい。
 会社もできるだけ、スペシャルデベロップメントプログラムなどの支援をするようになるでしょう。数値目標もつくるでしょうが、誰だって初めから自信があるわけではないです。対象の方をよく見ている上司や人事の人たちが「あなただったらできると思うからやっていただけませんか」と言った時には是非受けてもらいたい。ロールモデルにまでとは言いませんけれども、道を開いていくという気持ちを持っていただけるとありがたいなと思います。

アキレス 自分だけではなくて、それを見ている後輩たちがいるということも意識して、ここで自分が引いてしまったら後輩がどうそれを受け取るだろうかと考えることも必要ですね。男性の場合は、キャリアはアップしていくものだと思っていますので、普通に「はい、やります。ありがとうございます」と言いますね。

長谷川 ええ。ところが女性の場合は、そうではない環境ですので、パイオニアの人にはやはり少し苦労が伴うと思います。先ほどおっしゃったように、女性の方は失敗した時にどうしようかと考えられるから、分からないでもないですが、会社も失敗したら解雇とか、そんなことは考えていません。これは女性だけではなくて男性もそうですよ。

アキレス そうですね。たとえ異動になっても、そこでまた新しい仕事を開拓できる可能性がありますから。

長谷川 そういう、ある意味では思いやりのある社会であり、会社であると思いますから、あまり失敗することを心配しないでほしい。世の中はだいたい5分5分なんだから、失敗することを心配するんだったら、成功した時の喜びも半分ぐらい思っていただきたいなと思いますね。それでバランスが取れるのです。特に、「あなたは大丈夫ですからやってください」と言っているということは、自信を持っていいということなんです。「いろいろな人が見て、あなただったらできるから是非やってください」と言っているんです。

アキレス 私もアメリカの会社に勤めていた時に、あるポジションをオファーされて、できるかどうか不安な時がありました。その時にオファーしたボスが「I won't let you fail.(私があなたを失敗させない)」と言ってくれました。その言葉が自分の気持ちの中で大きな支えになりました。

長谷川 そうしたら答えは「I'll never let you down.(失望させません)」と言えばいいんですよ。

アキレス ただ単に任命してお手並み拝見ではなくて、サポートする側もこの人の成功が自分の成功という気持ちでやっていただければ、一歩踏み出せる方も多いのではと思います。

長谷川 いいですね。「I'll never let you fail」「I'll never let you down」というのが結論ですね。

アキレス 今日はありがとうございました。


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