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パワーアップ実践塾レポート

「パワーアップ実践塾2010」開講

問題提起を行う岩田塾長
 日本生産性本部は、「ワーキングウーマン・パワーアップ会議」と協力して、10月6日に都内で女性社員の活躍に向けた推進計画の策定と実践を支援する「パワーアップ実践塾」を昨年に続き開講した。

 冒頭、パワーアップ実践塾の塾長で、第1回の講師である岩田喜美枝・資生堂代表取締役副社長(ワーキングーマン・パワーアップ会議代表幹事)は「この場は実践塾であるので、しっかりと議論に参加して講師とインタラクティブな関係を作り、参加者同士がお互いの経験からも学びながら、自社で実践してほしい」と挨拶をした。
 経営戦略の一環として、女性社員の育成・活用・登用を最重要課題と位置付ける企業が増えている中、経営トップの意識も高くなり、積極的な取り組みをしている企業も増えてきているが、管理職以上に占める女性の割合は依然10%未満である。「パワーアップ実践塾」では、女性社員の活躍推進に取り組みたいと考える企業の人事・ダイバーシティ推進担当者が、6回の参加を通じて、効果的な推進方法を学び、具体的に実践をしていくことを目的としている。

企業経営戦略の視点で考える女性社員の活躍の必要性
 岩田塾長は、「なぜ、女性の活躍支援が必要なのか」というテーマについて、「人材の完全活用」と「ダイバーシティマネジメント」の2つの視点があるとした。「いかに良い人材を採用し、育て、活躍してもらうかというのは会社経営にとって最大の経営課題であり、女性社員が不完全な活躍しかできていないのであれば、それは人材の無駄使いである。また、多様な人材で構成されている市場を理解するには、社員の構成もマーケットの多様性を鏡で映したようなものであるべきだとした。更に、同じ価値観を共有しているモノカルチャーな集団では変化に対応しにくい。ダイバーシティは価値創造力の源泉であり、新しいアイデアは多様な価値観、多様な情報、多様な人的ネットワークを持つ社員が集まり、多様性の中から、対立や融合によって生まれてくるものだ」と述べた。

 さらに岩田塾長は、「女性が活躍できる会社に変えるというのは、構造改革である。既存の組織の考え方や行動様式を変えていく全社的な問題であり、力仕事になる。この構造改革を進めるには、PDCAをしっかり回していく責任を持つ組織を作ることと、現状分析と課題把握をし、目標に到達するための具体的な行動計画を作ることが重要である。企業の女性の活用度合いを3段階で考えると、日本の企業の平均的な姿は、女性は子どもができたら退職が当たり前という第1段階から、かろうじて仕事と子育てを両立している第2段階へ向かっている途中だと思う。第2段階へは、トップがその気になり、人事部が両立支援に取り組むことで、比較的簡単に進むことができる。最終的には、男女共に子どもを育てながらしっかりキャリアアップができる第3段階に向かうのだが、これは、ワーク・ライフ・バランス実現のための全社員の働き方の見直しや女性の育成・登用のためのポジティブアクションなど、いろいろな障害があり難しいが、弊社はいま、第3段階に向かって進もうとしているところである。」と話した。そのほか、具体的な例として、資生堂のアクションプランの紹介もあり、参加者は先進企業の取り組みを熱心に学んでいた。

活発な意見交換
 本実践塾では、問題提起を受けて参加者、講師、コーディネーターによる討議の時間を多く設けている。この日に議論をされた主な内容は以下の通りである。
<質問の一例>
 ○女性社員への両立支援は女性のキャリア志向にどのような影響を与えるか
 ○女性管理職の増加率を目標数値に掲げることのデメリットはないか
 ○管理職や役員をどう巻き込んでいくか

 上記のような質問がされ、企業の業態や規模、社内風土など、参加者の背景は様々であるが、自社の取り組みや、個人としての考えなど、活発な意見交換が交わされた。
 その中で、雑誌で読んだのだが、との前置きで、子育て中の女性社員の海外出張にあたり、子どもの世話をするために女性社員の母親の海外出張費を支払ったというある企業事例について話し合われた場面があった。子どもがいても、もっと頑張って働きたいと考える女性のために、今までの「仕事を免除する」という両立支援以外に、「普通に仕事ができるための支援」というものもあるのではないかとの視点には、ハっとさせられるものがあった。第2回以降、職場風土改革や女性人材の育成・評価・登用、メンタリング・プログラムの効果と留意点といったテーマで進んでいくが、どのような議論がなされ、実践をされていくのかが、楽しみになる第1回であった。
 終了後は、参加者を囲んで懇親会が開かれたが、その場でも積極的な交流が行われており、これから同じ課題に取り組もうとしている参加者同士のネットワークは、推進を進めるための大きな力になると思われる。
(以上:文責事務局、組織名・役職名は掲載当時のものです。)