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開催レポート
分科会@女性が働きやすい職場づくりや生産性向上につなげている取組
次に2つの分科会が行われた。分科会1では、「女性が働きやすい職場づくりや、生産性向上につなげている取り組み」をテーマにディスカッションが行われた。
登壇者は、今回の受賞組織の中から、日本ユニシス株式会社の本間美賀子氏(組織開発部ダイバーシティ推進室室長)、株式会社肥後銀行の上野由美子氏(人事部女性活躍推進室長)、株式会社バイタルリードの代表取締役森山昌幸氏の3名。コーディネーターは、ワーキングウーマン・パワーアップ会議推進委員の有沢正人氏(カゴメ株式会社執行役員経営企画本部人事部長)が務めた。
有沢 「働きやすい職場づくり」「生産性向上」といったイノベーティブにどのように取り組まれたのか、それぞれお話を伺いたい。
2006年度に社長の号令で「女性活躍プロジェクト」が発足。主にワークライフバランス制度の拡充として、育児休暇や産前産後休暇、短時間勤務、フレックスタイム制などについて、法定内容を上回る見直しを行っている。また、2008年には上司が認めれば誰でも申請できる在宅勤務制度を導入し、現在、全グループで約120人(うち3分の2は女性)が利用している。
こうした制度の充実により、出産を理由とする女性の退職は減り、この10年間の復帰率は95%以上となっている。また、当社が目指すビジネスエコシステム創出の企業に変革するためには、ダイバーシティは欠かせない。このため、ワークライフバランスの推進にとどまらず、2020年までに女性管理職比率を10%以上(現在は4.8%)にする目標を掲げている。女性の管理職候補、中堅層、若手の3階層に分け、それぞれ育成プログラムを同時・並行的に実施している。
2014年度には、女性を中心にビジネスを検討する有志グループが生まれ、業務としてではなく、昼休みに職種や年齢などに関係なくグループ全体での新しいビジネスの検討を進めており、実際にいくつかビジネスにつながってきている。
女性ならではというものにこだわらず、新しいエコビジネス、エコシステムの開発・創出において、女性が中心的な役割を果たすものとして、次年度以降もこうした活動を積極的に進めていく考えである。
2015年4月に女性活躍推進室を人事部内に設置し、トップのメッセージが行内全体に浸透した。課題の一つは女性の管理職比率の向上で、2020年3月までに8%以上を目標としている。
仕事と家庭の両立支援では、労働時間削減や意識改革に取り組んでいる。平成27年4月に事業所内保育所を設置するとともに、各種支援制度を利用する人、利用者をサポートする人、そして上司の理解が重要と考え、両立支援のガイドブックを作成し、イントラネットに掲載するなど、相互理解を深めるように働きかけてきた。また、育休者懇談会や育休復帰研修を通じて、仕事と家庭の両立のコツを学んだり、仕事に対するモチベーションを上げてもらうよう意識醸成を図っている。そのほか、育休者は長く休業することで所属からの疎外感を感じやすくなるため、自宅のパソコンやスマートフォンで閲覧できるサイトを開設し、必要な情報を発信するとともに個別の相談にも対応している。
キャリア開発では、入行3年目、5年目、7年目、10年目そして40歳の節目にキャリア研修を実施している。全行員を対象にしたこの研修以外にも、女性活躍推進室の設置後は、女性のキャリアアップを目指す意欲醸成を目的に、管理職養成研修、監督職養成研修のほか、パートタイマーには正行員にチャレンジしてもらうよう研修を盛り込んでいる。
また、今年1月から再雇用制度を導入し、育児や介護を理由に退職した行員は、退職後3年以内であれば、退職時の処遇で復職できるようにした。
これまでの取り組みにより、育休取得者は増加してきており、特に役職に就いた女性が増えたことで良いサイクルが生まれてきている。ロールモデルが増えたことで、後に続く後輩女性は心強いのではないかと思う。
現在、ワークライフバランスの推進施策として、19時半以降の時間外労働を原則禁止しており、男性の働き方を変えることにもしっかり取り組んでいきたいと思っている。
その後、パートタイマーの募集では「女性が働きやすい会社」というフレーズで、本当に優秀な方にエントリーしていただけるようになった。以来、女性が働きやすい職場をつくっていこうと、各種制度の整備だけでなく、それを利用しやすい風土をいかに醸成していくかということで、あの手この手を考えながら試行錯誤してきた。
当社には5つの委員会があり、それぞれが働きやすい環境を考えていく活動を続けている。もともと女性が働きやすい環境をつくろうということで始まった活動だが、そうした中で、実は男性の社員の働きやすさにもつながっていることに気がついた。
われわれの世界で技術者としてのキャリアを考えた時に、その一つに技術士という資格がある。女性の新入社員が入ってきた時に、これから結婚、出産、子育てといったライフイベントがあるから、技術士の資格は最短で取得した方がよいとアドバイスしたら、本当に最短で取得してしまった。
現在、子育て中の女性が子育てをしながらも一流の技術者になりたい、自分を高めていきたいという気持ちを持っている。そのキャリアアップの機会を作ってあげれば、自分からどんどん成長していく力があり、実際に結果を出している。この業界では技術士の数で会社の技術力が評価されるので、女性技術者が資格を取れば、それがまた仕事につながっていくという好循環が生まれている。
それ以外にも、大学院に行って博士号を取得したいという女性スタッフがおり、会社としても必要な経費を会社が負担、研究活動も勤務時間とみなすなどサポートを行っている。
本間 育休制度において、復帰に際しては元の職場、職種、職位で復帰することが明確になっている。ただし、休業中にプロジェクトが完了した場合には、別のプロジェクトに加わることになるが、何となく戦力外になってしまうこともある。ただ、上司とのコミュニケーションが良好な場合には、休業前と同様にすぐにバリバリ働けるようになるケースもある。
上野 当行でも、現職復帰となっている。しかし、金融商品やマーケットの状況は刻々と変わっており、ブランクに不安を抱える育休者もいる。そこで、参加は自由であるが、仕事の感覚を取り戻せるよう研修やセミナーなどを開催している。
復帰後の短時間勤務利用者、自分の仕事の見える化や、周囲の人に感謝の気持ちを伝えるなど、上司や周りの人と良好なコミュニケーションを特に意識しているようだ。
森山 もともと人数が少ないため、最初は短時間勤務者のカバーに苦労した。しかし、最近は「お互い様」が根付いてきている。ある女性は「今は技術を身に付けるため、思い切り仕事をしたいので、短時間勤務の人のカバーもしている。でも、私に子どもが生まれた場合には、みんなと同じように休ませていただく」と話している。
本間 まず、ダイバーシティをどう社内に浸透させていくかということがある。有識者などを招いたセミナーを開催したり、執行役員、上級管理職、女性社員を部下にもつ管理職の3区分で、それぞれ研修活動を展開したりしているが、特に指名などをしたわけでもないのに、介護や育児のテーマでは多くの管理職が集まる。やはり、こうしたテーマが職場におけるマネジメント上の課題になっていると思う。
また、女性の活躍推進については、2020年までに管理職比率を10%以上にする目標を掲げているが、女性からは「何故、管理職になる必要があるのか」という声を聞く。IT業界では、高度なスペシャリストとして活躍する道もあるため、男女に関係なく管理職志向が他業界に比べて低い傾向にあり、この打開が難しいと感じている。
上野 やはり管理職を目指す人がまだ多くはないことから、その動機付けが重要と認識している。選抜方式で管理職養成、監督職養成に取り組んできた結果、少しずつ意識の変化が見られるようになってきた。
また、人事部だけが女性の育成に関わるのではなく、プログラムに他部署も加わることで、横断的に女性の育成をバックアップする雰囲気を本部内に行き渡らせるようにしている。
加えて、管理職、所属長の意識変革が重要だと考えている。ある程度はトップダウンで行うが、研修だけでは不十分で、これからは所属長と連携して現場でのOJTに注力していきたい。
森山 当初は、女性の働きやすさを全面に打ち出して採用活動を行ってきたが、次第に「働きやすさ」だけでエントリーする人が増え、当社でどう成長したいかといった意識を持った人が少なくなってきた感じがしている。
さらに、中小企業は本当に少ないお金の中でやりくりしており、原価意識が大切である。働きやすい雰囲気を作って、いい会社にしていくためには、会社が利益を上げていく必要があることをきちんと伝えて、社員全員に理解してもらう必要があると思っている。
森山 中小企業は、トップが判断すればいろいろな取り組みをすぐに実行できる。そのため、トップが必要な情報や判断材料を入手し納得すれば、女性の活躍に向けた取り組みなどは、すぐに始められるのではないかと思う。
上野 私ども地方銀行業界では「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」の取り組みが3年目に入った。ダイバーシティの推進、女性活躍の推進は、これからますます重要になってくるものと考えている。もっと女性の力が発揮されれば、より良い地方創生が実現できるのではないかと思う。
本間 ポイントは、ダイバーシティの推進や女性活躍の推進に対する理解をどう社内に浸透させるかだと思う。そして、いかに早く女性にキャリア意識を持たせるか、そのためにどう動機付けをし、自分のキャリアを高めることに意識を向けさせられるかで、推進のスピードもかなり違ってくると思う。
今、ダイバーシティの推進、女性活躍の推進が、声高に叫ばれているが、性別によってどうこうというところから抜け出していかないと、時代から逆に取り残されて、金銭的価値のみを求めるような会社になってしまわないかという危惧を持っている。ハードのところはある程度できてきた。これからはソフトをいかに拡張して、そこを充実させるかという時代に入ってきたということを、改めて痛感した。
登壇者は、今回の受賞組織の中から、日本ユニシス株式会社の本間美賀子氏(組織開発部ダイバーシティ推進室室長)、株式会社肥後銀行の上野由美子氏(人事部女性活躍推進室長)、株式会社バイタルリードの代表取締役森山昌幸氏の3名。コーディネーターは、ワーキングウーマン・パワーアップ会議推進委員の有沢正人氏(カゴメ株式会社執行役員経営企画本部人事部長)が務めた。
有沢 「働きやすい職場づくり」「生産性向上」といったイノベーティブにどのように取り組まれたのか、それぞれお話を伺いたい。
日本ユニシスの取り組み/女性が中心となって新ビジネスを検討
本間 日本ユニシスは、昭和33年に設立された社員数約4,800人のIT企業である。このうち女性社員は約800人(約17.5%)で、その8〜9割が総合職。事業内容は、クラウドやアウトソーシングなどのサービスビジネス、システム販売や賃貸、ソフトウェアの開発・販売などであるが、世の中の流れはIoTの活用などで、業種や業態をまたがるサービスが創造されてきており、当社も今後、成長するデジタルエコノミー領域で、異業種を橋渡しする中核企業となるべく変革に取り組んでいる。そのためには、多様なセンスが求められており、当然、女性が活躍するチャンスも多くあるといえる。2006年度に社長の号令で「女性活躍プロジェクト」が発足。主にワークライフバランス制度の拡充として、育児休暇や産前産後休暇、短時間勤務、フレックスタイム制などについて、法定内容を上回る見直しを行っている。また、2008年には上司が認めれば誰でも申請できる在宅勤務制度を導入し、現在、全グループで約120人(うち3分の2は女性)が利用している。
こうした制度の充実により、出産を理由とする女性の退職は減り、この10年間の復帰率は95%以上となっている。また、当社が目指すビジネスエコシステム創出の企業に変革するためには、ダイバーシティは欠かせない。このため、ワークライフバランスの推進にとどまらず、2020年までに女性管理職比率を10%以上(現在は4.8%)にする目標を掲げている。女性の管理職候補、中堅層、若手の3階層に分け、それぞれ育成プログラムを同時・並行的に実施している。
2014年度には、女性を中心にビジネスを検討する有志グループが生まれ、業務としてではなく、昼休みに職種や年齢などに関係なくグループ全体での新しいビジネスの検討を進めており、実際にいくつかビジネスにつながってきている。
女性ならではというものにこだわらず、新しいエコビジネス、エコシステムの開発・創出において、女性が中心的な役割を果たすものとして、次年度以降もこうした活動を積極的に進めていく考えである。
肥後銀行の取り組み/女性役職者の育休復帰増加で好循環に
上野 肥後銀行は熊本県を基盤とする地方銀行で、従業員数は3,189人。正社員の45%が女性である。これまでも営業や緻密な事務処理などで女性も頑張ってきているが、業務経験に課題があったことから、女性のキャリアを開発するため、最近は女性が少なかった分野のポジションに配置するようにしている。2015年4月に女性活躍推進室を人事部内に設置し、トップのメッセージが行内全体に浸透した。課題の一つは女性の管理職比率の向上で、2020年3月までに8%以上を目標としている。
仕事と家庭の両立支援では、労働時間削減や意識改革に取り組んでいる。平成27年4月に事業所内保育所を設置するとともに、各種支援制度を利用する人、利用者をサポートする人、そして上司の理解が重要と考え、両立支援のガイドブックを作成し、イントラネットに掲載するなど、相互理解を深めるように働きかけてきた。また、育休者懇談会や育休復帰研修を通じて、仕事と家庭の両立のコツを学んだり、仕事に対するモチベーションを上げてもらうよう意識醸成を図っている。そのほか、育休者は長く休業することで所属からの疎外感を感じやすくなるため、自宅のパソコンやスマートフォンで閲覧できるサイトを開設し、必要な情報を発信するとともに個別の相談にも対応している。
キャリア開発では、入行3年目、5年目、7年目、10年目そして40歳の節目にキャリア研修を実施している。全行員を対象にしたこの研修以外にも、女性活躍推進室の設置後は、女性のキャリアアップを目指す意欲醸成を目的に、管理職養成研修、監督職養成研修のほか、パートタイマーには正行員にチャレンジしてもらうよう研修を盛り込んでいる。
また、今年1月から再雇用制度を導入し、育児や介護を理由に退職した行員は、退職後3年以内であれば、退職時の処遇で復職できるようにした。
これまでの取り組みにより、育休取得者は増加してきており、特に役職に就いた女性が増えたことで良いサイクルが生まれてきている。ロールモデルが増えたことで、後に続く後輩女性は心強いのではないかと思う。
現在、ワークライフバランスの推進施策として、19時半以降の時間外労働を原則禁止しており、男性の働き方を変えることにもしっかり取り組んでいきたいと思っている。
バイタルリードの取り組み/成長機会を与え、キャリアアップを
森山 当社バイタルリードは、建設コンサルタント業であるが、今は公共交通計画の業務を主にしている。働きやすさへの取り組みは、女性の総務課長が入社したときに「3人目の子どもを産みたいので、私が働きやすい就業規則にしたい」と言い、時短制度などを導入し、宣言どおり出産後に復帰してきた。その後、パートタイマーの募集では「女性が働きやすい会社」というフレーズで、本当に優秀な方にエントリーしていただけるようになった。以来、女性が働きやすい職場をつくっていこうと、各種制度の整備だけでなく、それを利用しやすい風土をいかに醸成していくかということで、あの手この手を考えながら試行錯誤してきた。
当社には5つの委員会があり、それぞれが働きやすい環境を考えていく活動を続けている。もともと女性が働きやすい環境をつくろうということで始まった活動だが、そうした中で、実は男性の社員の働きやすさにもつながっていることに気がついた。
われわれの世界で技術者としてのキャリアを考えた時に、その一つに技術士という資格がある。女性の新入社員が入ってきた時に、これから結婚、出産、子育てといったライフイベントがあるから、技術士の資格は最短で取得した方がよいとアドバイスしたら、本当に最短で取得してしまった。
現在、子育て中の女性が子育てをしながらも一流の技術者になりたい、自分を高めていきたいという気持ちを持っている。そのキャリアアップの機会を作ってあげれば、自分からどんどん成長していく力があり、実際に結果を出している。この業界では技術士の数で会社の技術力が評価されるので、女性技術者が資格を取れば、それがまた仕事につながっていくという好循環が生まれている。
それ以外にも、大学院に行って博士号を取得したいという女性スタッフがおり、会社としても必要な経費を会社が負担、研究活動も勤務時間とみなすなどサポートを行っている。
「お互い様」意識で仕事をカバー
有沢 女性が育休から復帰した場合、どのような仕事に就くのか。本間 育休制度において、復帰に際しては元の職場、職種、職位で復帰することが明確になっている。ただし、休業中にプロジェクトが完了した場合には、別のプロジェクトに加わることになるが、何となく戦力外になってしまうこともある。ただ、上司とのコミュニケーションが良好な場合には、休業前と同様にすぐにバリバリ働けるようになるケースもある。
上野 当行でも、現職復帰となっている。しかし、金融商品やマーケットの状況は刻々と変わっており、ブランクに不安を抱える育休者もいる。そこで、参加は自由であるが、仕事の感覚を取り戻せるよう研修やセミナーなどを開催している。
復帰後の短時間勤務利用者、自分の仕事の見える化や、周囲の人に感謝の気持ちを伝えるなど、上司や周りの人と良好なコミュニケーションを特に意識しているようだ。
森山 もともと人数が少ないため、最初は短時間勤務者のカバーに苦労した。しかし、最近は「お互い様」が根付いてきている。ある女性は「今は技術を身に付けるため、思い切り仕事をしたいので、短時間勤務の人のカバーもしている。でも、私に子どもが生まれた場合には、みんなと同じように休ませていただく」と話している。
社内にいかに浸透させるかが課題に
有沢 これまでの取り組みの中で、一番厳しかったことや、まだ乗り越えられていないことがあれば、お伺いしたい。本間 まず、ダイバーシティをどう社内に浸透させていくかということがある。有識者などを招いたセミナーを開催したり、執行役員、上級管理職、女性社員を部下にもつ管理職の3区分で、それぞれ研修活動を展開したりしているが、特に指名などをしたわけでもないのに、介護や育児のテーマでは多くの管理職が集まる。やはり、こうしたテーマが職場におけるマネジメント上の課題になっていると思う。
また、女性の活躍推進については、2020年までに管理職比率を10%以上にする目標を掲げているが、女性からは「何故、管理職になる必要があるのか」という声を聞く。IT業界では、高度なスペシャリストとして活躍する道もあるため、男女に関係なく管理職志向が他業界に比べて低い傾向にあり、この打開が難しいと感じている。
上野 やはり管理職を目指す人がまだ多くはないことから、その動機付けが重要と認識している。選抜方式で管理職養成、監督職養成に取り組んできた結果、少しずつ意識の変化が見られるようになってきた。
また、人事部だけが女性の育成に関わるのではなく、プログラムに他部署も加わることで、横断的に女性の育成をバックアップする雰囲気を本部内に行き渡らせるようにしている。
加えて、管理職、所属長の意識変革が重要だと考えている。ある程度はトップダウンで行うが、研修だけでは不十分で、これからは所属長と連携して現場でのOJTに注力していきたい。
森山 当初は、女性の働きやすさを全面に打ち出して採用活動を行ってきたが、次第に「働きやすさ」だけでエントリーする人が増え、当社でどう成長したいかといった意識を持った人が少なくなってきた感じがしている。
さらに、中小企業は本当に少ないお金の中でやりくりしており、原価意識が大切である。働きやすい雰囲気を作って、いい会社にしていくためには、会社が利益を上げていく必要があることをきちんと伝えて、社員全員に理解してもらう必要があると思っている。
早い時期にキャリアの動機付けを
有沢 最後に、この会場に来られている方にメッセージをお願いしたい。森山 中小企業は、トップが判断すればいろいろな取り組みをすぐに実行できる。そのため、トップが必要な情報や判断材料を入手し納得すれば、女性の活躍に向けた取り組みなどは、すぐに始められるのではないかと思う。
上野 私ども地方銀行業界では「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」の取り組みが3年目に入った。ダイバーシティの推進、女性活躍の推進は、これからますます重要になってくるものと考えている。もっと女性の力が発揮されれば、より良い地方創生が実現できるのではないかと思う。
本間 ポイントは、ダイバーシティの推進や女性活躍の推進に対する理解をどう社内に浸透させるかだと思う。そして、いかに早く女性にキャリア意識を持たせるか、そのためにどう動機付けをし、自分のキャリアを高めることに意識を向けさせられるかで、推進のスピードもかなり違ってくると思う。
非金銭的な価値を最大化する取り組み
有沢 一般的に労働生産性でいう付加価値は金銭であるが、3社の方々は、金銭的価値だけではなくて、非金銭的価値に対して最大化しようという取り組みを、従来の発想ではないような形でやってこられた。しかも、違う業種でありながら、考えている地平、見ているところは基本的に同じである。今、ダイバーシティの推進、女性活躍の推進が、声高に叫ばれているが、性別によってどうこうというところから抜け出していかないと、時代から逆に取り残されて、金銭的価値のみを求めるような会社になってしまわないかという危惧を持っている。ハードのところはある程度できてきた。これからはソフトをいかに拡張して、そこを充実させるかという時代に入ってきたということを、改めて痛感した。