TOPページ > エンパワーメント・フォーラム2016 > 開催レポート2016
開催レポート
「エンパワーメント・フォーラム2016」開催レポート
2016年2月26日、「ワーキングウーマン・パワーアップ会議」と日本生産性本部は、都内で8回目となる『エンパワーメント・フォーラム2016』を開催した。当日は約170名が参加し、「女性活躍パワーアップ大賞」表彰式、2015年の「エンパワーメント大賞」大賞受賞組織による講演、今回の「女性活躍パワーアップ大賞」受賞組織によるパネルディスカッションが行われた。
なお、同会議では、2009年より表彰制度を実施しているが、女性の活躍を企業の生産性向上につなげていくことを目指し、一層の普及に向け、今年、賞の名称を「女性活躍パワーアップ大賞」と変更したものである。
開会あいさつ
冒頭、日本生産性本部・茂木友三郎会長は開会挨拶として、次のように述べた。「日本が人口減少という供給制約を乗り越えるためには、質の高い労働力の確保と働き方改革が必要である。年齢・性別・国籍を問わず意欲ある人材が、その能力を存分に発揮するためには、ダイバーシティの推進が不可欠となっている。昨年8月に、女性活躍推進法が制定され、これを契機に女性の積極的な活用とその環境づくりが一層加速していくことが期待されている。
企業活動においても、異なる視点・発想を採り入れ、イノベーションを生み出し、生産性を向上させることが不可欠である。今まで以上に女性の参画を高めていくことが肝要である。
女性の活躍推進の動きは、大企業を中心に着実に進んできている。これからは、地方の企業や中小企業にも広げていくことが重要であり、日本全体の活力向上にもつながる。受賞事例をベストプラクティスとして、今後も女性活躍にむけた取り組みを引き続き進めていただきたい。」
企業活動においても、異なる視点・発想を採り入れ、イノベーションを生み出し、生産性を向上させることが不可欠である。今まで以上に女性の参画を高めていくことが肝要である。
女性の活躍推進の動きは、大企業を中心に着実に進んできている。これからは、地方の企業や中小企業にも広げていくことが重要であり、日本全体の活力向上にもつながる。受賞事例をベストプラクティスとして、今後も女性活躍にむけた取り組みを引き続き進めていただきたい。」
「女性活躍パワーアップ大賞」表彰式
続いて、「女性活躍パワーアップ大賞」の表彰式が行われ、茂木会長より、受賞組織の代表者に表彰状が授与された。
なお、大賞にはLIXILグループ、優秀賞には、アクセンチュア、KMユナイテッド、全日本空輸、損害保険ジャパン日本興亜、パソナグループ、三越伊勢丹の6組織が、奨励賞には10組織が選ばれた。
◆受賞企業の取り組みはこちらをご覧ください。
講演「経営戦略としての女性の活躍推進」〜大成建設の取り組み〜
次に、昨年の第2回「エンパワーメント大賞」大賞受賞の、大成建設株式会社代表取締役専務執行役員管理本部長兼社長室副室長 桜井滋之氏による講演が行われ、内容は以下のとおりである。女性活躍推進に取り組むきっかけは、日本の建設投資がピーク時の84兆円から2006年には50兆円に落ち込んだことである。今後も持続的に発展していくために様々な施策を検討し、その中の一つが女性の活躍推進であった。その時点で勤続年数が男性と同程度であり、女性の勤労意欲が高まっている中、女性の活躍を活性化していくことが重要であると考えた。2007年に、専門組織である女性活躍推進室(現人材いきいき推進室)を立ち上げ、女性社員の活躍やワークライフバランスの推進につながる各種の施策を行っており、その中で3つの取り組みを紹介する。
2007年から継続的な取り組み
1つ目は、女性の採用数拡大である。2007年以降の女性の採用割合は、おおむね20%を超える状況になった。アニメを使ったCMをテレビで流すなど、採用活動を積極的に行っている。2つ目は、新たな職域への配属である。社内を活性化させるため、建設現場や営業職にも職域の拡大を積極的に行った。ものづくりや会社基盤の整備に関わりたいという女性社員自身のやりがい、男性社員への刺激、新たな発想による生産性の向上などの効果を期待して、女性が働きやすい環境づくりに向け、様々な意見を取り入れた。具体的には、女性用のトイレや休憩所の整備、女性用の小さなサイズの作業服や軽量化した安全帯などの用意や、ヘルメットのあごひもの透明化を行った。
また、最近は海外勤務を希望する女性社員もかなり増えている。2010年からは毎年女性社員を複数の海外作業所に研修生として派遣を行っている。研修後、本配属となり、継続して海外で勤務する女性社員もいる。
3つ目は、継続就業の支援である。「ジョブリターン制度」では、出産、育児、介護、あるいは配偶者の転勤に伴って退職した社員を再雇用している。中には退職後10年を経て戻ってきた例もある。また、「勤務地変更制度」を導入し、勤務地限定社員が、配偶者の転勤、婚姻による転居等によって、入社時の勤務地では継続就業が困難になった場合でも、退職せずに当初の勤務地から転勤できる。
逆に、勤務地を限定しない総合職で入社した社員が勤務地限定社員に変更できる「キャリア選択制度」も導入している。
能力開発への積極的な支援
両立支援制度を利用する期間が長期化すると、キャリア形成に与える影響も大きくなり、復帰後に遅れを取り戻すことは容易でなくなる。彼女たちが、将来、求められる職責に耐えられる人材に育ってほしいと思っている。従ってここ数年は、必要な能力開発支援につながる施策を女性社員自身あるいはその家庭、さらに女性社員の上司に対して積極的に取り組んでいる。身近にロールモデルがいないため、女性社員が自らの将来像を描きにくく、漠然とした不安に陥りやすい傾向にあった。できるだけ早い時期から、将来のキャリアを考える研修や世代、部門を越えたネットワーク作りの機会を提供している。
2012年からは、選抜した社員を対象に次世代リーダー育成研修を実施している。研修では、当社の施工物件を見学し、客観的に自社物件を評価することで、仕事に対する誇りの醸成に役立てている。また、会社の経営方針や、男性が多い組織の中で女性が能力を発揮するために必要な行動や思考法も教えている。
さらに、昨年10月、「経営戦略としての女性活躍推進」というテーマで、全役員に対して研修を行った。役員が自部門にその研修の内容を持ち帰り、管理職層と内容を共有することで、部門独自の取り組みも広がってきている。また他にも、女性社員を部下に持つ管理職研修を実施している。女性社員が指導的な役割を担う人材へと成長するためには、個人の特性やレベルを考慮した仕事の与えられ方や、仕事へ意欲を高める上司の指導が欠かせない。年3回の上司と部下の面談の機会を設けており、女性社員がキャリアの相談をする上で、必要なコミュニケーションと適切なアドバイスをするには、上司との信頼関係を構築することも重要である。
しかし、多くの上司は、基幹職女性社員の育成の経験がほとんどない状態だったので、多少の戸惑いがあった。また、同じ部下でも男女違ったマネジメントが必要な場合もあることから、この研修では、男性とは違う女性の価値観、思考、言動、キャリア観を理解し、やる気と能力を顕在化させるコミュニケーションスキルや、ハラスメントにならない指導法など、部下を適切に指導できるようなノウハウをカリキュラムに取り入れている。
一様には言えないが、男性と違った仕事に対する取り組みやキャリアに対する意識について、理解しながらマネジメントする必要性を認識することができたという声も上がってきており、研修を通して会社の女性活躍推進に対する方向性を、管理職層に理解させるよい機会になっている。
取り組みによる4つの成果
1つ目は、育休の取得者、あるいは復帰後の短時間勤務者の数が、2006年以降増えており、出産を契機に退職する社員はほとんどいなくなった。2つ目は、職域を拡大した結果、施工や事務管理を行う社員の数は、2015年には2006年との比較で10倍に増えた。建設現場で副所長という重責を担う社員も出ている。建設現場で働く女性でチームを編成し、女性が働きやすい環境の整備にも取り組んでいる。営業で働く女性も当初は誰もいなかったが、現在は20名を超える社員が活躍している。
3つ目は、2009年に初めて女性ライン管理職が誕生し、その活躍が若手の女性社員の刺激になっている。そのうち1人は2014年に設計本部の部門長に昇格した。2020年までに女性管理職の数を3倍にすることが目標である。
4つ目は、企業イメージの向上である。女性活躍推進への取り組みが外部から評価されることで、メディアでも取り上げられ、注目度が高まり、社員のモチベーショアップにもつながった。
今後、目標を確実に達成するため、今まで取り組んできた施策を始め、常に社員のニーズを把握しながら、有効かつ効果的な施策に取り組んで、計画的に継続した女性管理職の育成に取り組んでいきたい。
- 1
- 2