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開催レポート

パネルディスカッション「女性の活躍で、組織にパワーを」

 次に、「第2回エンパワーメント大賞」受賞組織によるパネルディスカッションが行われた。登壇者は、大成建設管理本部人事部人材いきいき推進室室長塩入徹弥氏、西友執行役員シニア・バイス・プレジデント人財部担当大坪眞子氏、ブリヂストン人事部ダイバーシティ推進ユニットリーダー植木樹理氏。コーディネーターは、ワーキングウーマン・パワーアップ会議推進委員でNTTコミュニケーションズ常勤監査役の小林洋子氏である。

大成建設の取り組み

 2006年に本格的に女性の活躍推進に取り組むことを決めた。建設市場がピーク時から比べ、この2006年には60%ぐらいまで落ち込んだ。建設業自体が成熟した産業で、今後も仕事量が大きく増えることは想定できない。今後、男性だけでは厳しいだろうと、建設業で働きたい意欲と能力があれば、性別に関わらず採用する方針を掲げた。
 一方、社内の女性比率は約15%で、平均勤続年数は1990年代頃に7〜8年だったが、2006年には男性とほぼ変わらなくなった。就業継続の意欲が高い女性が増えたので、女性の能力を発揮できる環境を整えようと考え、2007年に女性活躍推進室を設置し、具体的な取り組みとして6つの方針を定めた。
 1つ目が、会社の方針の浸透と社員の意識改革である。まず専門の組織を立ち上げ、会社の取り組みに対するアンケートを行った。女性社員の約3分の1には直接ヒアリングも実施し、その意見をもとに、男性管理職に女性社員を活かすマネジメント研修を全国で18回ほど行い、女性を部下に持つ管理職の約7割が参加した。
 2つ目に、女性社員の採用数拡大に取り組んだ。女性社員の多くが補助的業務だったが、2003年からは基幹職の女性採用を試験的に始めた。2007年以降は本格的に広げ、それ以降の新卒採用の約2割が女性社員になっている。
 3つ目に、職域の拡大である。女性の採用とともに職域も広げた。建設業は作業所が売上の約9割となる基幹業務なので、作業所へ女性が活躍できる土壌を広げた。現在は約140名の基幹職の女性社員が働いている。同時に、環境整備として女性用の更衣室やトイレも設置し、作業服のサイズ拡充もした。最近では海外の作業所にも女性社員を派遣している。また、女性が全くいなかった営業職にも社内公募をし、現在約20人が働いている。
 4つ目に、継続就業の支援として、制度や仕組みを整えた。
 まず、子育て等で退職した方が正社員として復職できるジョブリターン制度をつくり、勤務地限定の社員が配偶者の転勤で退職することを防ぐために、転勤を認める制度もつくった。
 また、育児サポートプログラムとして、産休・育休の前や復職前に、本人と上司、人事担当者の3者面談を実施している。休職中もスキルが落ちないように、資格取得を後押ししたり、セミナーを実施して育休者同士のネットワーク形成の機会も設けている。セミナーの様子は動画配信しているので自宅でも視聴可能である。女性が仕事と生活を両立して働くには、配偶者の理解と協力が必要なことから「パートナーと考える仕事と生活の両立支援セミナー」を開催し、家庭の協力体制づくりのサポートもしている。
 5つ目の女性社員の能力開発では、海外建設現場実務研修に、2010年からは女性社員も派遣をしている。
 また、女性社員はロールモデルがいないことで漠然とした不安感を持ちやすいため、早い時期から中長期的なキャリア観を持ってもらったり、リーダーとしての意識の醸成を目的とした選抜型研修を実施している。さらに、直属上司は女性部下育成のキーマンと考え、当該上司に対するマネジメント研修を2013年から取り入れた。
 2020年に女性の管理職の数を3倍にしていく目標を掲げており、それに向けてさらなる方策の検討をしている。
 そして、6つ目に、環境整備や風土改善への取り組みとして、働きやすい職場環境改善活動を実施し、社員間コミュニケーションの活性化や性別役割分担の是正に取り組んだ。
 取り組みの成果として、女性が少ない職域への配属者が増え、女性のライン管理職も誕生した。2014年には女性部長も誕生し、若手女性社員のモチベーションに非常によい影響が出ている。
 また、取り組みが外部からも評価されるようになった。くるみんの認定を4度受け、均等推進企業として東京労働局長優良賞を受賞した。公共工事を発注する際の入札の参加資格や、最終的に発注先を決める総合評価方式では、当該認定や受賞を評価項目として設定している自治体がある。今後そのような自治体が増え、当社の優位性が増すことを期待している。

西友の取り組み

 お客さまの約6割が女性である。従業員の女性割合は7割で、そのうちの95%がパート社員である。社内では、正社員とパート社員の区別をしておらず、全員アソシエイトと呼んでいる。
 なぜ、女性の活躍を推進するかであるが、女性社員の割合が大きい企業にとって、人材育成のターゲットとなるのは当然女性である。女性リーダーを育てていくことが、変化していく業界と、変化していくお客さまのニーズに応え、ビジネス継続の最大の経営戦略になる。
 具体的な取り組みとして、1つ目に2004年からパート社員の正社員登用を実施している。制度の特徴は、正社員もパート社員も同一のグレードであれば、同一の基準、すなわち業績とコンピテンシー、この2つの軸で評価をして昇進を決定していることだ。
 大きなポイントとして、パート社員がグレード3に昇進した時に、正社員への転換にあたって資格要件や登用試験はなく、自分の意志のみで正社員になるか、このままパートで勤務をするかを選ぶことができる。雇用区分に関係なく同じ土俵で評価・昇進を決定し、正社員に転換する時も、本人のキャリアの志向で決定することができることが西友のパート社員の正社員登用の大きな特徴である。
 2つ目に、役員のコミットメントである。女性の活躍、女性のリーダーを育成していく上で、役員のコミットメントは欠かせない。2010年から社長と執行役員を含めた14名は、年2回以上、ダイバーシティ関連の活動の主催、およびダイバーシティ関連のイベントへの参加を義務付けられている。また、2人以上の女性メンティを持つメンタリングも義務付けられている。
 3つ目に、女性リーダーカウンシル活動がある。2009年に女性シニアマネジメント8名によって設立されたボランティア組織で、現在は17名で女性活躍推進に関するトップマネジメントへの提言などの活動を行っている。
 4つ目に、DC(物流センター)女性カウンシルがある。男性社員が多い物流センターにおける女性社員のモチベーションを高めるため、2012年から関東の3物流センター勤務の女性アソシエイトを中心に活動している。
 5つ目として、店舗の女性管理職選抜育成と働き方の見直し推進がある。ビジネスの一番のコアは店舗であり、店長はまさに店を預かっている経営者である。店長の数を増やすため、店舗の女性管理職候補を選抜・育成し、確実に登用するまでの一連のプログラムをスタートさせた。
 こうしたさまざまな取り組みを通じて、当社のカルチャーである「すべての人を尊重する」を実践し続ける企業でありたい。またお客さまに選び続けられて、さらにこの日本の中で、ウォルマート・ジャパンとして成長していきたい。

ブリヂストンの取り組み

 従業員は1万6614人で、半数以上が工場で交替制勤務をしている。女性活躍支援策や、仕事と育児の両立支援策を強化するため、2008年にダイバーシティ推進室を設置した。
 まず、女性の採用と配置に力を入れた。2009年から女性総合職採用の数値目標を立て、計画的に採用している。2014年は、事務系総合職の45%、技術系の25%が女性という比率になった。採用後に女性を育て活躍をしてもらうため、女性の工場への配置や、海外赴任も開始した。
 次に、女性総合職のキャリアサポートやネットワーク構築にも力を入れている。女性社員にキャリアを考えさせる研修を2009年から始めた。女性総合職を部下に持つ男性の上司を対象とした研修も同時に実施した。
 また、育児に関するものだけではなく、配偶者が海外赴任する場合、一定期間休職できる配偶者海外転勤休職制度も導入している。
 さらに、育児休職からの復職支援の取り組みとして、育児休職から復職をする時に、人事の担当者と復職先の上司と本人、3者の面談を必ず実施するようにしている。復職時と復職3カ月後に面談をして、困ったことはないかなどを上司と本人で話し合い、人事担当者がその場を取り持っている。
 その他、育児支援施策として事業所内保育園も設置している。現在、東京都の小平市に事業所内保育園があり、約120名の園児がいる。横浜市の事業所にも2015年の7月に事業所内保育園を開設する。
 取り組みによって得られた成果としては、研修によってモチベーションが上がった、キャリア意識が上がったということや、実際に様々な部署で活躍をする女性が増えており、社員の意識の変化につながっている。
 以前は上司向けの女性社員のキャリア育成の研修などで、「トップが言うからやっているけれども、僕は心の中ではダイバーシティは反対だよ」と言っていた上司がいたが、実際に配属した女性が育児休職から戻ってきて活躍をしていると、「やっぱり女性の力は素晴らしいね」と意見が変わったりしている。そういう一つひとつの積み重ねが少しずつ成果となって出てきていて、今ようやく0.5歩ぐらい進んだかなというところである。
 これからは、もう少し大きな成果に向けて、取り組みをさらに進めていく必要があると考えている。

意識的に本質を変えていく取り組みを略

 コーディネーターの小林洋子氏は次のように述べた。
 女性活躍を推進している企業に共通する項目が3つある。
 まず1つ目はトップのコミットメントが極めて明確であること。余人をもって代えがたいほど成長した女性が、突然育児休職を取ったり、短時間労働で戦力としての稼動が不足したりする「リスク」を折り込み済みで、トップが「組織の本気度」を発信しているか、トップがどこまで腹を据えているかを中間管理層は見ている。
 2つ目はコミュニケーション。男性中間管理職が、自分できちんと腹落ちしているということ。心の底から理解するまで、なぜ女性活躍が必要なのかをとことん伝える。また、謙虚に振る舞う女性社員の本音の野心を、上司が対話の中で引き出せているかもポイント。
 3つ目は広い意味でのパイプライン。思い付きではなく計画的に女性を採用し育成する。ライフイベントを乗り越えるためのさまざまな施策、特にキャリアを断絶させない継続支援をし、やがては経営意思決定ボードに引き上げていく。そういうパイプラインとしての取り組みが非常にしっかりしている。
 女性が活躍する時代は自然に放っておいたら来ないのだから、意識的に取り組む必要がある。意識的に、例えば長時間労働などの働き方自体を変えていく。女性も含めて多種多様な人材が働きやすい世の中にする。時間で測るのではなく、成果で測る評価システムや、業務プロセス全体を改善するなどして生産性を上げる。そういう本質的な取り組みが非常に大事だと感じた。

 プログラム終了後には、推進委員、エンパワーメント大賞受賞者と参加者による交流会を開催し、活発なネットワーク作りが行われた。


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